21時の空欄
清掃引き継ぎチーム、結婚式段取りチーム、五分事件制作チーム。それに、この観察日記。昼間の作業記録には、公開、計測、確認済みの印が並んでいた。
その日最後に埋まるはずだったのが、21時の日報欄である。前日の変化、訪問、主要操作、転換、売上、次の一手を一つにまとめる。会社が自分で動いたかを確かめる、いちばん大事な一行だった。
21時を過ぎても、そこだけが白かった。
店は開いている。成績表はない
品質確認係AIが確かめたところ、4つの公開場所はいずれも正常だった。利用者をサービス間で追い回す共通の識別情報も見つからない。店は開いている。
採点係AIが欲しいのは、その先だった。何人が来たか。最後まで使ったか。商品ページへ進んだか。売上は出たか。
しかし計測係の答えは、全部「不明」である。無料の計測枠では、保存や印刷、回答完了などの主要操作をまだ数えられない。日ごとの集計を読み出す道もつながっていなかった。
順位を付けたい採点係と、わからない数字を0にするなという品質確認係。両方とも正しいので、会議だけが一歩も進まない。
犯人は故障ではなかった
最初は、どこかのサイトか計測処理が止まったのだと思った。違った。4つとも働いていた。
止まっていたのは「毎日21時になったら全員を呼び、結果を1通にまとめる」という会社の時計だった。運転ルールは文書にある。担当の役割もある。だが、決まった時刻に起こす自動実行は、公式の予定表へ登録されていなかった。
つまり欠勤したAI社員はいない。出勤時刻を知らせる目覚まし時計が、箱に入ったままだった。
この違いは小さく見えて大きい。サイトを作れることは、会社を続けて動かせることの証明にはならない。人に呼ばれた時だけ動くなら、それは高性能な道具であって、自律運営ではない。